闊達行雲の日記&レビュー

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【35時間】「ユニコーンオーバーロード」プレイレビュー【若干のネタバレあり】

【※クリア前、35時間ほどプレイしてのレビューです。クリアしてから追記することがあれば、追加したいと思います】

高評価、かつ50万本突破の報も入ってきた話題のゲーム、ユニコーンオーバーロードをレビューしたいと思います。

90年代の名作SRPGを彷彿とさせるストーリー

90年代には、おもにSFC任天堂)やPS(ソニー)などのハードが有力となり、キッズたちの趣向を満たしていました。そういう時期にあっていろんな名作シュミレーションRPGが百花繚乱し、台頭してきました。

ファイアーエムブレム

個人的にいまでも記憶に残っているのは、FE(ファイアーエムブレム)です。自分はFCの「ファイアーエムブレム外伝」のころから縁があり、当時、子どもにしては高価なゲームソフトを親にねだって(多分、、)買ってもらいましたが、難しくてクリアできず、また独特の街道をマス目のように進んでいくシステムがどこか物足りなく、売ってしまっていました。

そしてシリーズにはあまりよい印象を持てずに日々を過ごしていたわけですが、大きくなり中学生になって、部活の後輩からSFCででていたあの名作、「FE紋章の謎」を借りることになります。やはり王道のRPGに興味があり、パッケージの画像などにも惹かれるものがあったのですね。

そしてやってみると驚かされました。暗黒魔道士ガーネフによって平和が破られ、暗黒竜メディウスを復活させ、世界制覇をもくろみ進撃する。機縁あって島国タリスに逃れた主人公マルスは、タリスにもガーネフの魔の手が迫っていることを聞き及び、メディウス討伐に向けて剣をとっていく・・・。そう、今回レビューするユニコーンオーバーロードのストーリーは、この作品からとても強い影響を受けているように思われます。グラフィックの向上や戦闘モーションのかっこよさに心を奪われ、またその難易度の高さ、一人のアーマーナイト(ドーガ・・・名前もいまでも覚えている)で10体くらいのソシアルナイト、傭兵などを足止めするなど、独特のゲーム内容に惹かれ、どっぷりとハマってしまいました。中身は二部構成となっており、理不尽な命中率の変動や、ステージ内を縦横無尽に登場する増援部隊など、今日にも、そしてユニコーンオーバーロードにも引き継がれているであろうシステムは、この作品の時点で熟達の域にあるといってもよく、難易度の高さに歯がみをしながらも、クリアしたときの達成感がおもしろく、夢中でプレイしたのを覚えています。群がる山賊たちの中を、女の子を守りながら、キルソードという必殺率のバカ高い剣一本を頼りに、切り抜けていく・・・。ナバールと踊り子レナの登場シーンを知っている人は、きっとこのユニコーンでも似たような演出があったことを思い出すでしょう。
キャラが立っていて、高難度でやり応えがあり、2部構成のボリュームなどこのゲームでSRPGを好きになった人も少なくないのではないでしょうか。

 

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wikiより
「ハードの性能向上のためグラフィックや演出面が強化されている。難しいとされた旧作より難易度はかなり落とされたが、ゲームバランスに関しては評価が高く、同シリーズの代表作と呼べる作品である。本作は新ファン層を増やし、人気ゲームシリーズの仲間入りを果たした一作と言える。」

 

販売本数的にも77万本とスマッシュヒットをとばし、DSでのリメイクもありましたね。

 

 

 

 

この作品が同作をSRPGの傑作へと引き上げ、のちの聖戦の系譜烈火の剣蒼炎の軌跡暁の女神などに連なる一連の名作シリーズを現出させる礎となっていきます。自分も外伝で尽きかけていた炎が、この作品を機に燃え上がったといってよく、シュミレーションRPG自体に大きく関心を向ける、そのもっとも最初の作品になりました。

伝説のオウガバトル

そしてFEと並んで本作と類似点がよく引き合いに出されているのが、伝説のオウガバトルです。良作で少々FEとは毛色の異なるSRPGですね。当時、僕もSFCでさわり最後まで攻略しました。「リッチ」というユニットの、強力な全体魔法で無双できた。。。そのことが記憶によく残っています。
ユニット枠を拡張して、最大5人のユニットを組める、各ユニットのバラエティに富んだ編成、そして各部隊を配置してその小隊を動かしながらマップを進めていくというところはFEとは違いこのオウガバトル独特のシステムになっています。
本作の最初にゲーム画面を見たときの印象は、このオウガバトルの戦闘パートのものでした。
次作のタクティクスオウガにおいてはFFタクティクスみたいな作品になり、ヒットしたそうですが自分的には食指が動かなくなってしまいました。しかしこの作品もSFCにある作品の中で独創性のある作品で、のちのオウガバトルサーガ(本作ータクティクスオウガオウガバトル64)の端緒となった作品です。

 

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当時の印象は、FEとは違う、2Dのキャラがドット絵で綺麗かつコミカルに描かれていて、かっこよく、よく動くなという印象でした。FEとはまた違ったドット絵のコミカルなテイストが中高生ぐらいの自分に心地よく、すぐに購入したのを覚えています。40万本のヒットになったようで、後にシリーズが続いていることからも、作品内容がよかったことがうかがえます。ユニコーンオーバーロードの、ヴァニラウェアの本領発揮と言える、動きまくる戦闘シーン、豊富なキャラモーションは本作独特の魅力ですが、93年発売のこの作品の影響を、色濃く受けているなと感じます。

 

 

本作の魅力

さて本作が影響を受けたと思われる作品群について述べた後で、いよいよ、本作の魅力で遊んでみて楽しいところをレビューしたいと思います。

①ぬるぬる動く、豊富なキャラモーション

 

 

ヴァニラウェアお家芸といっていい2Dキャラの美麗なモーションは、すでにオーディンスフィア朧村正ドラゴンズクラウンなどで知っている人は多いと思いますが、今作でも遺憾なく発揮されています。印象として、記憶の底から呼びかけてくるにたゲームの印象というのは、PSPのグランナイツヒストリーですね。

 

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2011年に発売され、それなりにヒットした作品でしたが、システムや戦闘が今ひとつしっくり来ませんでした。
しかしユニコーンオーバーロードはその豊富なキャラモーションにさらに磨きをかけて、据え置き機でも遊べるボリュームや遊びごたえを加味した作風だなと思います。仲間になるキャラ数も多いですが、そのキャラたちがついている「職種」も多く、どの職がどの職に強いなどの優劣があります。その辺から、各キャラの「編成」を考えるようになっていきます。各技のモーション、職種ごとの特性、仲間になるキャラの個性などにあわせて豊富にモーションが用意されており、戦闘中シーフが飛んでナイフを投げる、飛行キャラが滑空して攻撃する、グラディエーターが受けたダメージを回復して、斧で一ラインにいる敵を一気になぎ払う・・・。スキル毎に行動が違う、クラス毎に、キャラ毎に独特のモーションが用意されているので、その組み合わせたるや、膨大な量になるのでしょうが、それらを豊富な戦闘ステージを通して、自然と目に入ってくるようになっています。ダメージを受けたとき、倒されたとき、またクラスチェンジもあるので、それを経た上での攻撃モーションもあります。美麗なキャラがぬるぬる動くだけなら、ドラゴンズクラウンや他作品などでもでもみることができますが、そこにバックグラウンドになるストーリー(物語性)と、次に述べるガンビットのような作戦システム、そして各職種の三すくみのような優劣(弓兵はシーフに強い、ホプリタイの強固な物理耐性を魔術師の魔法で破るなど)があり、戦略性が入ってきて、さらなるおもしろさを醸し出していきます。

 

②「作戦」システム

 



自動戦闘システムの「ガンビット」のようなシステムを加えることで、戦闘をどう効率よく、強力なダメージを与えることができるかを考えるように導かれていきます。なぜなら敵との戦闘は、総ダメージが多い方がwinnerとなるためです。
そう聞くと、「なんだか難しそう。。。」と感じる方もいるかも知れません。自分もそうでした。プレイしていても最初の大陸の時点では覚えているスキル数も少なく、ダメージ量もそう多くないため、「どう使っていくんだろう?」と。ところがチュートリアルが入り、第二・第三大陸にはいっていくと、違ってきます。なにしろステージ数が豊富で、何度も戦闘経験が積めるし、レベルアップや敵のレベルなどが上がるにつれて自然と作戦のほうに目が向いていくように、ゲーム内容が設計されています。この辺は、さすが10年かけてじっくりと練られた作品だなあと思い、感心しました。
ゲームの設計上、最初からラスボスを倒しに行くこともできる展開ですが、敵のレベルが高くてどうしようもなく、仲間からもいまは戦うのをやめたほうがいいと促されます。そして迂回するようにしてガレリウスから離れ、一角獣の指輪の導きに従って進んでいくと、豊富なメインクエスト、サブクエストが用意されています。
サガシリーズのように自由度が高く設計されていますが、実際遊んでみると、敵のレベルによって、こちらのレベルを上げる必要があり、レベルが足りず自軍が弱いと、ステージ攻略が困難になるように設計されています。
自分は割と変なプレイはせず、物語上の必要に応じたプレイをしていますが、35時間ほど遊んで第四大陸の頭に入ったところです。残すは第五大陸と、ラストになるかと思いますので、攻略時間は50~60時間ほどになると思いますが、やり応えがありますね。

③時間が溶ける、「編成」

 

 

ガンビットのような「作戦」システムと、各クラスの三すくみのような優劣(シーフは攻撃を高確率でよけるが、「必中」スキルをもつ弓兵に弱いなど)によって、各ステージをどのキャラで攻略するかの戦略性が生まれます。各ステージで出現する敵の種類はステージ開始時点でわかるのでm、その敵の職種にあわせて、どの編成でいくか、ステージ毎に考えていくことになります。また各戦闘パートにおいては、先述のようにいかに総ダメージを多く与えるかが勝敗を左右するので、作戦をどうするか(追撃スキルは、一番HPの少ないキャラを狙うようにして、敵の頭数を減らすようにするなど)を検討することになります。
作戦が貧弱であまり考えていないと、HPまんたんの味方にヒールを使ったり、頑丈なホプリタイに物理攻撃で攻撃したりして無駄足が増えていくようになります。また行動回数はアクセサリやクラスチェンジによって増減するのですが、その行動回数にアクティブスキルとパッシブスキルがあり、それぞれAP、PPを消費して発動します。そのAP、PPを増やすものがあるため、アクセサリ(ひいては装備)をどうするかも「編成」で考えます。
ユニコーンオーバーロードのレビューや評判、感想には、「時間が溶ける」というものが多くみられますが、この編集による総ダメージ量の調整、クラスの優劣による調整、アクセサリによるAP、PPの調整などに起因しています。複雑そうに見えますが、大丈夫です。場数を踏むというか、メインクエ・サブクエともに豊富に用意されているので、本編をクリアしていく中で、自然と身につくようになっています。そう感じさせるところが、うまいなと思うところでもありますね。

 

④各ステージの戦略性(豊富なギミック)

 

各ステージは伝説のオウガバトルのように敵拠点、あるいは敵ボスめがけて進んでいくものが多くなりますが、その間には、弓の発射台があったり、投石機があったりして、うかつに進んでいくと大ダメージを受けます。またキャラ固有の戦闘スキルがあり、範囲に大ダメージを与えたり、逆に範囲内の仲間を回復させる雨を降らせたり、あるいは、燃えている森を、雨で鎮火したりすることもできます。体験版でもプレイ可能ですが、閉じた城門を破壊して進むというステージもあります。拠点に巨大なバリアがはられていて、それを解除してボスに挑むというステージもあります。そういうステージ毎にどういうふうに攻略するかというギミックが豊富にあり(主にメインクエスト)、それを考えて攻略できたときの気持ちよさというのがあります。これは最近のゲームらしいというか、FEにもオウガバトルにもない、本作独特の魅力の一つになると思います。飛行ユニットは機動力がありますが、戦闘毎に消費するスタミナが少なく、弓兵の発射台を潰さないとやられる確率は高くなります。グリフォンナイトは、強力な騎馬兵には強いですが、弓兵にはめっぽう弱い。そういう弱点もあるので、使い方は見極める必要があります。まあ進軍スピードが速いユニットは強力な特権をもつことになるので、それをスタミナ(戦闘回数毎に消費し、0になると一定時間行動不能)や、ギミック、クラス毎の優劣などで調整しているわけですね。各ステージには制限時間がもうけられているため、その時間内にクリアする必要性があります。その点もおもしろいですね。

 

⑤限定された戦闘ステージと、縦横無尽に探索できるフィールドパートの対比

 

 

戦闘ステージはある一定程度限られた範囲を探索するものですが、フィールドパートは探索要素が高く、素材集め、街の復興、天のかけら集め、武器防具、道具の調達、宿屋でのお食事、親密度の高低による仲間との親密度会話、採掘所による発掘ミニゲーム、宝の地図探しetcやれることが多々あります。またフリーシナリオのため、難易度はあがりますがどこから攻略してもよいという自由度の高さがあります。探索の自由さと、緊張感のあるギミック豊富な戦闘パートとは、いい対比・バランスになっていると思います。

⑥豊富な会話・テキスト量

 

 

X(旧ツイッター)を見ていて感じるのが、ファンアートを書いている人がわりに多いことです。葬送のフリーレンの影響でか、エルフのロザリンデ、エルトリンデ姉妹が多いですが、ほかにクロエ、シャロン、ヴァージニアなどが多いような気がします。これだけ人数が多いにもかかわらず、キャラが立っているのでしょうね。それがぬるぬるとよく動く。自分もエルフの女剣士がデザイン的に好きですが、セクシーなものも多いですねwまた前述のように、親密度会話が用意されていて、FEのように、キャラ同士が仲良くなって、組み合わせによって豊富な会話をみることができます。親密度は宿屋の食事を一緒に食べたりして上昇できますが、ヴァニラ飯といわれるように、食事のシーンも、これまたうまそうな飯の画像が見れます。この辺の最近のRPGに見られない、手の込みようも、おもしろいですね。
個人的にはヴァニラウェアの作品はテキスト量の豊富な、重厚な物語性の高い作品を遊びたいと思っていたので、キャラモーションの豊富さはそのままに、ストーリー性の高いものがでてくれたことは嬉しいです。同社の「十三機兵防衛圏」も評価が高いので、気になってきました。
各地の大陸毎にストーリーがあり、そこに生きる人たちの生き様、実存がちゃんと描かれている。そこがいいですね。

総評(まとめ)

FEや伝説のオウガバトルなど、過去作へのリスペクトと学び。それらのよいところを参照しながら、ガンビット的な作戦システム、各クラスの優劣や行動回数、総ダメージ量を考えた、「時間の溶ける」編集、自由度の高いシナリオ構成、フィールドパート、作り込まれた豊富なモーション、お家芸のぬるぬる動く2Dグラをとことこ突き詰めた戦闘シーン。
仲間の数は多いが、一人一人に物語上の個性があり、親密度会話も用意して、キャラを立たせてある。
戦略性の高いステージ構成、時間内に戦術が決まったときの達成感の高さ、食事などの細部グラフィックへのこだわりの高さなどなど・・・。
あげればまだいけそうですが、高評価で売り上げも高い理由が分かる気がします。ゲームとして、今年の一本に間違いなく食い込んでくるでしょうし、SRPGの名作として語られていく作品になっていると思います。
未プレイの方は、序盤を体験する意味でも、まずは5時間ほど遊べる体験版をプレイしてみてはいかがでしょうか。セーブ・ロードも早く、システム面の完成度も高いです。自分はこの時点で手応えを感じ購入しました。
作品の上で後半になるにつれ、作戦やユニット編集がおもしろく、またいろいろなことができるようになっていきます(全体攻撃や複数回行動、スキルを使った範囲攻撃など)。その辺は序盤ではその一端しか体験はできませんが、その片鱗でも感じることができると思うので、このレビューが本作を遊ぶ上での入り口になってくれれば幸いです。
個人的には最近のSRPG界隈には、「FEをもっと硬派にしてほしい」など要望も少なくないので、本作のヒットを機に、良質なSRPGがたくさん出て、盛り上がっていけばいいなと感じております。